愛しのアルペジオ
R-18描写があります。苦手な方はそっとブラウザを閉じてね。
構わぬ!という心臓が強いだけどうぞ。
どちらともなく舌を絡め、その間に竹谷は食満の服を脱がせた。唇を離してぼんやりしている食満の首筋へとキスを落とし、白く薄い胸へと触れる。食満の体は竹谷の手よりも冷たかった。
「…んっ」
胸の辺りを触っていると食満が慌てたように竹谷の手を掴んだ。硬くなった胸の先を摘まむと食満は口を抑えて首を横に振る。そして「そこはだめだ」と涙目で告げた。
「でも気持ち良さそうですよ?」
胸の先の硬くなった部分を指で潰すように押すと食満は体を震わせ、そして「そこ、弱いから、だめ」と竹谷の手を止める様に掴んだ。
「弱いんですか?」
「ん。声、抑えられない。男の喘ぐ声なんてお前聞きたく、ないだろ、あっ」
不意打を食らって抑えきれない声が漏れる。食満は慌てて口を塞ぎ、耐える様にしていた。
「男の人にアンアン言わされてる食満さんで何回抜いたと思ってるんですか。気持ち悪いなんて思うはずないでしょ」
食満の手を掴み、唇から離すと竹谷は執拗に胸を弄る。その度に堪え切れない声が漏れ、その声に竹谷は自分が興奮しているのが分かった。
「隣りの部屋、今空き部屋だから声我慢しないでいいですよ」
「ふっ…ばかっ」
睨みつけられたって涙が浮かんでいては煽るだけだ。竹谷は食満の胸元へ舌を這わせ、尖った先を口に含んだ。舌で突き、歯を立てる。そうすると食満は体を反らせた。
「うっわ、どろどろ。そんなに気持ちいいんですか?」
竹谷が食満の下半身へと手を伸ばすと、食満のものは既に勃ち上って先走りを零していた。ズボンも下着も脱がし、食満自身へと手を沿えると食満の口から甘い声が漏れる。
「うぁっ」
右手でそそり立ったものを扱き、そして空いた左手と舌では胸を弄る。暫くすると食満が一際高い声を出して竹谷の掌へと白濁を吐き出した。
「はぁっ…あっ」
あまりの早さに竹谷が驚いていると、食満はむくりと体を起こし「俺だけされるのは嫌だ」と睨みつけて来る。目元は赤く腫れていて、睨みつけられてもいつもより威力が半減している。
「お、硬くなってる」
食満が出した精液をティッシュで拭っていると食満が竹谷のズボンへと手を伸ばした。そしてズボンを脱がし、下着の上から触れる。竹谷のものは既に硬くなり、天を向いていた。
「そりゃあ食満さんエロかったから」
「…口でしていいか?」
「いいんですか?」
「ん」
食満は短い返事をしたかと思うと下着の中から取り出したものへと触れた。そして「でけぇな」と呟いたかと思うと躊躇うことなく口へと含む。生温かい粘膜の感触に竹谷は声が出そうになった。
舌で先を弄り、舌を這わせて裏筋をなぞる。空いた手で根元や玉への愛撫も忘れない。
フェラをしてもらうのは初めてではなかったが、それでもこんなに上手かった人はいなかった。
「食満さんって顔小さいっすね」
「ほおか?」
「う、わっ、咥えたまま喋んないで」
「らっておまへは」
「…食満さん、やばい」
竹谷が限界を訴えると食満は嬉しそうに目を細めた。そして更なる追い打ちを掛けてくる。
「出るっ」
食満の顔を離そうとしたけれど間に合わず、食満の顔と胸元に盛大に精液が掛かってしまった。
「ごめんなさい」
「ん?いーって」
食満は口元をべろりと舐めて拭った。その仕草があまりにもエロくて竹谷は今しがた出したばかりのものが硬くなるのを感じる。
食満の体に掛かった精液をティッシュで拭い、そして竹谷は食満の両足を掴んだ。
「な、何すんだよ」
抵抗する食満に竹谷は「ここ、使うンスよね?」と尻の割れ目へと指を這わす。
「待て、待てって」
食満の足が見事に竹谷の顔に当たり、竹谷がベッドから転がり落ちてしまった。
「痛ぇ…食満さん足癖悪すぎっすよ」
竹谷がベッドの上へと戻ると食満は両足を畳んで座り込み、そして「自分でやる」と告げた。
「ローションとかあるか?」
「…ないっすね」
「…じゃあオリーブオイルあっただろ」
「それでいいんですか?」
「食えるものなら大抵平気だから」
竹谷はキッチンからオリーブオイルを取ってきてそして食満の掌へと出した。とろりとした液体を食満はそのまま尻の割れ目にある穴へと塗りたくる。
「つーか、見んな」
またもや食満の足が竹谷の頭へと落ちる。食満は恥ずかしいのか耳まで赤く染めていた。
「直接見なければいいんですよね」
その言葉に食満が頷いたのを確かめて竹谷は食満の背後に回りその体を抱き締める。そして両足を食満の足に絡めて思い切り開かせた。
「鏡越しならいいですよね?」
食満が視線を前に向けるとそこには姿見があり、その鏡に自分の秘部が映し出されていた。
「だ、め」
足を閉じようとしてもそれは叶わず、竹谷の手は食満の胸元へと伸び、まだ硬い胸の先を弄る。
「あっ…んっ」
逆らえないと思ったのか、食満は足の力を抜いてオリーブオイルを纏った指を秘部へと埋めて行く。穴へと埋まる指が一本から二本、三本へと増える頃には食満のものは腹へ着くくらいに勃ち上っていた。
「あぁっ、んんっ…はぁっ」
耳と胸を弄られ、自分で後ろを慣らしている食満の姿はあまりにも欲情的で竹谷のものはすっかり硬くなっていた。
「俺も指挿れていい?」
竹谷が訪ねると食満はぼんやりとした表情のまま小さく頷く。許可を貰えた竹谷は食満の後ろから這い出し、前へと座り込む。そしてオリーブオイルを絡めた指を一本その穴に挿れてみた。
そこはずぷずぷと簡単に竹谷の指を飲みこんだ。中は思ったよりも熱くて柔らかい。竹谷は中を探るように指を動かして行く。
「やぁっ」
ある場所に触れた時、食満の体が震えた。
「そこは、だめだ」
竹谷が触れようとすると食満の指が中でそれを拒む。けれど竹谷は諦めなかった。
「だって食満さんイイところばかり駄目だって言うから。ここ、イイんでしょ?」
何度も指先で触れると食満はとうとう頷いた。そして「も、いれて」と指を穴から抜く。指が抜かれたそこはひくひくと誘う様にひく付いていて、竹谷はごくりと唾を飲み込んだ。
「えろい」
「も、早く、しろっ」
「挿れますね」
竹谷の言葉に食満は頷き、そして喉を鳴らした。竹谷はゆっくりと体を進め、慣らしたそこは難なく竹谷のものを飲み込んでいく。
「ぁっ、ふっ…」
挿れる時は苦しいのか顔を顰めていた食満だったが、一度全部埋めてしまうときゅうと後ろで締めつけて来る。そして「動いて」と懇願してきた。食満から動けと言われ、竹谷はようやく腰を動かした。食満の足を抑えつけ、何度も挿出を繰り返すと食満の口からは甘い声が零れる。
「たけ、やぁっ、あぁっ」
竹谷の律動に合わせて自ら腰を振る食満は竹谷の妄想した姿に似通っていた。違うのは自分の名前を呼んでくれる事。
「た、けやっ、きもち、いい?」
不安そうにそう尋ねてきた食満へ「気持ちいいです」と返し、同じ質問をすると食満はこくりと頷く。
「きも、ちいぃっ」
食満はそう言ってシーツを握り締め、暫くすると一度も前を触る事なく、後ろだけでそのまま達した。
切なくて今にも死んでしまいそう。
食満はイく時にそんな声を出した。
食満が果てる時に後ろが締めつけられ、竹谷もすぐに食満の中に白濁を出してしまう。
「あぁっ」
中に出されているのが分かるのか、食満の体がぶるりと震え、そして閉じられていた瞼が開いた。零れる涙を舌で舐め取り、そしてそのまま口付ける。何度も繰り返し口付けていると口付けの合間に「竹谷」と名を呼ばれた。
髪を撫でると食満は竹谷の手を取り、その手に頬をすり寄せる。安堵を浮かべたその表情を自分が与えている。そう思うと「好きです」と告げずには居られなかった。
「好きです。好き。食満さん、好きですよ」
何度も何度もそう繰り返す竹谷の唇を食満はキスで塞いだ。そして竹谷の声に何ひとつ答える事なくキスを深めて行く。
「竹谷、もっかい」
そう強請った食満に竹谷は苦笑した。
「ん、俺もしたいです」
竹谷のその言葉に食満が嬉しそうに笑う。
好きだという言葉より、もっと体を重ねたいという方が食満を喜ばせる。それが少し寂しいと思いつつ、竹谷はもう一度食満の体を組み敷いた。
それからもう一度体を重ね、明け方には二人して眠りに落ちた。
ベッドは男二人が寝るには狭く、竹谷は背後からぎゅうと食満を抱き締める。時たま寝苦しそうにしていた食満だったが、すぐに慣れたのか竹谷の腕を握り締めていた。
*:*:*
窓の外から生活の音が聞こえ始めて竹谷が目を開けると部屋の中は光で満ちていた。時計は昼前を差している。随分と眠っていたようだった。
竹谷が横を向くと食満は既に起きていた。ベッドの上で体育座りをしていて膝に額をくっつけている。
「食満さん?」
竹谷が名前を呼ぶとその体がびくっと震えた。そしてゆっくりと顔が上り、不安そうな瞳が覗く。
「ごめん」
食満はそれだけ告げるとまた唇を横に結んだ。
その言葉の意味を竹谷は察する事が出来た。
きっとこの人は竹谷を引き摺りこんでしまったと思い込んでいるのだ。そして自己嫌悪に陥って、多分死にたいと思っている。食満はそんな顔をしていた。
そんな食満を竹谷は馬鹿だと思う。
そんな事全部俺の自業自得だってことにしてしまえばいいのに、この人はわざわざ自分を責めてしまうのだ。強くも無い癖に他人を責める前に自分を責める。馬鹿みたいに優しい人だ。
そしてこの人を竹谷は愛したいと思った。
「それって俺がフラれたって事ですか?」
竹谷の言葉に食満は驚いたように目を見張る。
「やっぱり俺じゃ役不足ですか?」
「…違っ」
「じゃあ、何の『ごめん』なんですか?」
その問いに食満は答えきれず、暫くしてから「なんなんだろうな」と苦笑した。
涙が零れ落ちないのが不思議なくらい、その瞳には涙が溜まっている。
竹谷はベッドから下りてぐいっと伸びをする。そして落ちていた下着とズボンを身に付けながら食満の方を見つめた。
食満はさっきから竹谷の行動や言葉に神経を尖らせていて、今にも泣き出しそうな顔の癖に泣くもんかと唇を噛み締めて竹谷を見ている。
きっと色々覚悟をしているのだろう。けれどその覚悟を竹谷は無駄にする。
彼が想像して怯えている結末を竹谷は選ばない。
体を強張らせて座ったままの食満に竹谷は笑いかけたけれど、食満はそれでも気を抜かなかった。
それが寂しいと思うのと同時に、悔しい。
今の竹谷は食満の孤独の前に無力だった。
「朝食っつーか、もう昼食になっちゃいますけど何か作ります。食満さんは卵は目玉焼きでいいですよね?」
「…」
「俺は卵焼きにするんで後でアヒルの絵描いて下さいね」
竹谷の言葉に食満はふっと泣き出しそうな笑みを浮かべ、そして「ん、分かった」と頷いた。そしてそのまま顔を伏せてしまう。
泣いてしまった食満に竹谷は特別な言葉をひとつも掛けず、二人分の朝食を作り始める。
食満用の目玉焼きに、ソーセージに卵焼き。
全てが出来上がる頃には室内は美味しい匂いで充満していた。それはとても幸福な匂いだ。
きっと食満の中から竹谷を巻きこんでしまったという罪の意識は暫くは消えないだろう。一緒にいると思い出させて悲しませてしまうかもしれない。
それでもこんな朝を何度も迎える事が出来れば、と竹谷は強く思った。
(おわり)
あとがき
「愛しのアルペジオ」最後まで読んで頂きありがとうございました。
ただ単に食満と竹谷どちらかをゲイにするかとしたら食満だよなーと思い、ゲイの食満とノンケの竹谷という設定でお話書き始めました。
最初は軽いノリだったのにも関わらず、予想以上に食満がめそめそしてて…でもそれ以上に竹谷が明るいんで、きっと二人は大丈夫だと思います。
とりあえず、あと二つほど後日談書きたいなって思ってます。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
(2011/4/21)